AOMIDORI

5月3日、まだ陽が上がる気配さえもみえない午前3時半に葉山の自宅を出発。
逗葉新道から横横をとおり16号線を北に向かう。中央高速の八王子ICの手前まで
来ると少し道が混みだした。

GWの後半の三連休、家族3人で松本に旅行に行った。

何故「松本」なの？妻も聞きたいところだっただろうが、その前に自分はどこでも良いと
言いきってしまっていたためか、この旅行の目的をしつこく聞くことはしてこなかった。

亡くなった母の生まれた地であり、母方の祖先が眠るところ。そして20数年前に
2年間だったけどボク自身も暮らした町が松本であった。しかし、なかなか行こうと思わ
ないまま今日まできてしまっていた。今回このタイミングを逃したら、一生行けないかも
しれないとさえ感じた。そしてわずか3日前に市街地からも車で20分くらいの温泉地の
旅館の予約がとれたのも奇跡だった。この辺はこの松本を中心に東西南北全てに数々の
温泉地を有しているが、さすがGW期間、旅行自粛ムードで観光地も困ってるという噂や
昨今の「自粛ムード」を自粛しようキャンペーンがきいたのか、どこに聞いても満杯で、
やっぱり今回はあきらめようかなと思っていた矢先の出会いであった。

ボクらの車は、渋滞予想ピーク午前7時小仏トンネル付近30kmを、事前に無事に通過
できたためあとは休み休みノンビリ気軽に走ることができた。

最初の目的地、蟻ケ崎霊園には、9時前に到着。何年もお墓詣りしていなかったことを
ご先祖様にお詫びしたあとは、国宝「松本城」へ。しかしここは一瞬ディズニーリゾートか
と思わせるような行列。普段なら(ボクら以外の並んでいる人たちも)きっと見学はパス
するんだろうが、そこはGWの魔力　に吸い込まれてしまう。そして城内に入ったら入ったで
有名セレクトショップのセール初日か？の混み具合であった。

城から外に出れたときには、すっかりお腹も空いてしまった。

松本と言えば『そば』である。どこで食べるかが、この旅行の
良し悪しを決めるくらい大きなポイントになるであろうと、何店舗か前もってピックアップ済
だったが、妻もこの旅行が決まってから急いで買った『松本12か月』(伊藤まさこ著)で
事前に知識を仕入れていたらしく、「S」というところが候補に。しかし残念ながら、GW中
は前日までの予約のみと軽く断られた。少しだけ暗雲が...、だがこちらには、遠い昔この
地に住んでいたというアドバンテージがある。で、若き日々に何回も通った「もとき」に行く
ことした。その頃とは違う場所、松本城と重文旧開智学校の間にあるその店のそばは、
半透明で弾力がある。なんでも吟醸蕎麦というらしい。やはり美味い。そして懐かしかった。

その後、たぶん、ここ数年の間に観光名所に育てあげられたんであろう「中町通り」へ。
横浜で言えば元町？原宿で言えば竹下通り？地元の方々はあまり来ないのでは、っと
思わせるような街並み。いやここだけではないんだけど、松本の街並みはボクが住んで
いた頃に比べ、きちんとした統一感、しっかりしたコンセプトの上にたって街つくりが
成されていた。古き良きものを全面にたて、新しくつくる建物にもどこかレトロ感を感じさせ
たりとか、この中町も全体が土蔵蔵造りになっている。松本は正確には中日本なのだが、
北を少し感じさせる白と黒を基調としたきれいなおしゃれな街に変貌していた。

その後松本駅前の「中島酒店」へ行く。もちろんここも妻は事前チェック済。地の酒、ワイン
が多く取り揃えられているとのことだったが、これまた予想を上回る品揃えに夫婦で
ビックリ。あれもこれも欲しい気持ちを抑えに抑え、「小布施ワイナリー」のメルローと、
「五一ワイン」のGOLDと、「KIDOワイナリー」のセイベルを一本ずつお土産
(もちろん自分への)を買って帰ることにした。

といったところで小雨も降りだしたし、少々疲れたので、本日の宿美ヶ原温泉の「芝浦荘」
へ向かう。山小屋風の普通の建物、通された部屋もなんということもない簡素な造りであるが、
何故か2部屋使ってくれと。ひと部屋ではお茶を飲みくつろいで、もう一部屋で寝てください　と。
GWの混んだ時期に本当に良いの？と思ったが、宿の方針なのであろう。ありがたい心使い
であった。
ナギサと温泉に浸かったあとは、食堂で食事。地の酒はあるか聞くと先程買った五一ワイン
があるそう。赤を頼むと程よく冷えたもの(？？)が出てきたが、これ常温ならきっと美味い
と思わせるものであった。

で、実は今回の旅行ではもう一つ楽しみがあった。20数年前に松本に住んでいた時に
ヨソ者のボクといつも仲良くしてくれた友人に、それこそそれ以来で会うということだった。
彼の名はタカシという。ボクより2つ下だったから、もう40後半、変わってしまったのかも
そして大体会おうと提案して迷惑ではないだろうか　と迷いつつ、旅行の前日に思い切って
電話したのだった。あまりに突然のことで電話をしたボクさえも上手く間を持たせらえない
気がしたが、喜んで会いましょう　ということになった。旅館の好意で部屋で飲んでも良い
ですよ　ということで、あまりにもボリュームがありすぎて残した料理をラッピングしてもらい
それをツマミながら、ビールと先程の五一ワインを頼む。ウチの妻も交え3人で乾杯し、
数分でこの20年の空白は埋まる実感をもてた。次回は葉山に来てくれという約束をし、
ボクのこの旅行のテーマの一つは完了。

明けて、5月4日。チェックアウトしたあとは、まず「松本民芸館」へ。ボクとナギサは10分で
スルー。

それから、「山辺ワイナリー」へ。ナイアガラを違うヴィンテージで2本買う。

そこから、醤油、味噌造りの「大久保醸造」へ。ここは凄かった。
3代目という現ご主人は、陽気な職人さんという感じ。ほとんど卸しはせず直接購入だけで
のみ手に入れられる貴重な味噌を、4代目になる娘さんに丁寧に説明してもらって
結局全部購入した。

お話ついでに、おすすめのそば屋はないか尋ねてみたら「米十」の投汁そばを食べて
みな　と言われ、場所を教えてくれた。泊まっていいた宿のすぐ近くだったのだが、紹介され
なかったら絶対わかんないところ。そして、食べてみな　と言われなかったら絶対選ばな
かったであろう投汁そばである。これは、いわゆるそばしゃぶしゃぶみたいなもので、
長野県の北部で多く食べられるものらしい。寒い季節に食べるものなのだという。タレに使用
しているのは、当然ながら「大久保醸造」のものだという。そしてこの醤油でしか、米十の
オーナーは、この味は出せない　と力説していた。前日の「もとき」とはまた違ったそばの
香りが広がるもの。もちろん美味い。これだけ違いがあれば一年中毎日そばでも飽きない
でしょうね　と妻は話していた。

一応、松本のことはここまで。

だが、幼き頃、「遠足は家に着くまで終わってません」と先生から聞かされたことを思い出した。
大渋滞の高速にのらず、ずーっと一般道で行くことにし、無事葉山の自宅に着いたのは
日付けが変わった夜中の12時半のことであった。

2012年ゴールデンウイーク

松本旅行記

TAKU-PON